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コンピューターサイエンスの分野において、コンピュータービジョンは画像や動画などのビジュアルコンテンツのパターンを判別するために利用されます。商品管理用スキャンロボットなどで、コンピュータービジョンは小売業界を変革すると予想されています。例えば、自動チェックアウト技術は、実店舗で消費者が購入する商品の画像から購入品リストを自動的に生成し、従来の買物体験の効率を大幅に向上させています。
小売業者は競合より一歩先んじるため、常に新しい戦略を試みます。そして、新戦略の一環として、多くの企業がワークフローにAI技術を実装しています。例えば、小売店舗で最近目にするサービスロボットや無人AI決済にはAIが活用されています。また、小売業向け分析ツールや自動倉庫などの裏側でもAIが活躍しています。データ分析や機械学習、高品質な教師データセットを組み合わせて、AIシステムは顧客からの問い合わせへの対応、レコメンドエンジンや在庫管理の改善に貢献しています。この記事では、小売業界でよく利用されているAIをいくつか例に取り、実際の活用事例や実装のためのヒントについてまとめました。さらに、今日の小売業界を変革する可能性のある「AIによる自動化」の基盤となるテクノロジー開発についても見ていきましょう。
リテールAIとは?
世界的に小売業に最先端のAIとは?技術を導入するリテールAI(リテールテック)が注目されており、今後も小売業界が大きく変化していくと予想されています。特に最近は新型コロナウイルスの影響で、無人店舗などの導入が世界的に進化しようとしています。リテールAIの注目企業の一つとして紹介させていただきますが、株式会社トライアルホールディングスが 「テクノロジーで世界一のお買い物体験を実現する」リテールAIの業界リーダーとして、スマートストアの進化に取り組んでいます。
また、一般社団法人リテールAI研究会は、2017年にリテールにおけるAIの活用に関する情報の共有を目的に発足し、2018年には流通企業様を対象とした「流通部会」も立ち上がりました。
小売業におけるサービスロボット
サービスロボットは最近人気が高まっており、その最も興味深い実装例は接客ロボットでしょう。日本全国のソフトバンク店舗では、接客ロボットPepper(ペッパー)が斬新で楽しい会話をしながら、顧客からの基本的な質問に答えます。同様に、アメリカのホームセンター、ロウズが利用しているLowebot(ロウボット)は、複数の言語で質問に答え、探している商品の場所を顧客に教えます。また、ロウボットはコンピュータビジョンを利用して在庫を監視し、店舗全体の製品の売れ行きについて従業員にフィードバックを与えることもできます。
仕組み: バーチャルアシスタントと同様、サービスロボットは音声認識技術を利用して顧客の質問を理解します。この音声認識システムが、人間の音声を機械が理解できる形式にデジタル化し、音声の意味を分析して、以前のインプットや事前にプログラムされたアルゴリズムに基づいて回答します。多種多様な質問に答えるために、これらのロボットは大量の音声データを必要とします。
小売業におけるレコメンド機能
次に、ECサイトで活用されているAIについてお話ししましょう。利用可能な商品やサービスの範囲が飛躍的に拡大しているため、消費者は現在、情報過多に陥っています。そこで、レコメンド機能は、欲しいものを見つけるために消費者が進むべき道を示すガイドとして機能します。YouTubeやNetflix、Spotifyなどは全てレコメンド機能を活用していますが、この機能は小売業でも重要な役割を担っています。 Amazonのレコメンドエンジンは同社の売り上げの35%に貢献していると言われ、しばしば参照基準とみなされます。しかし、Amazonだけでなく、Best BuyやEbay、EtsyなどのECサイトでも販促のためにレコメンド機能が利用されています。これらのレコメンド機能には次のような様々な形態があります。
- サイト内のおすすめ商品の表示
- 関連商品を勧める
- 類似顧客が購入した商品の表示
- 商品の新しいバージョンが利用可能かどうかを知らせる
- 購入履歴に基づいたおすすめ商品の表示
基本的に、レコメンドシステムは顧客タイプのデータベースを利用します。定められた属性によってユーザーを比較し、ユーザーグループの中で商品をランク付けします。商品は価格や人気度などの要素に基づいてランク付けされます。自動レコメンド機能を構築する際、システム構築用データについて考慮すべき事項が三つあります。まず、高品質なデータを収集すること、次に質の高いアノテーション、そして最後に検索エンジンの精度を検討することです。
小売業における無人店舗
無人店舗は従来の会計方法による制約を取り除き、ショッピング体験を向上します。Amazon Goというコンビニを例に取ってみましょう。モバイルアプリを利用して店に入れば、後は簡単です。必要なものを手に入れて立ち去ればよいのです。会計するためにレジに並ぶ必要はありません。商品のスキャンと支払いプロセスが完全に自動化されているからです。
小売店の自動化に関するもう一つの注目すべき例は、衣料品大手ユニクロのセルフレジでしょう。顧客がスキャナーにかごを置くだけで商品の会計を行えるので、レジに従業員を配置しておく必要がありません。顧客にとっては買い物のプロセスが簡単になり、店側にとっては従業員が接客に集中できるというメリットがあります。
無人店舗はコンピュータビジョンを利用して、店内またはチェックアウトエリアのどちらかで、購入商品をスキャンし、認識します。これらの商品は在庫データベースに照らして確認され、アプリを通じて自動的に支払いが行われるか、チェックアウトプロセスに組み込まれます。セルフレジを準備するためには、スキャン用に正確なアノテーションを付けた在庫商品のデータベースが必要となり、そのためには、店舗内のカメラの設置場所が重要となります。
小売業界で活用するためにコンピュータービジョンモデルを開発する際、大きな課題となるのは、現実的なチェックアウトシナリオを反映するのに十分な学習データを集めることが困難なことです。 そこで、当社は商品・物体認識に使える小売関連の公開画像データセットを以下にまとめました。
自動チェックアウトの店舗データ
食料品データセット: 約40店舗の食料品店で四台のカメラを使用して撮影した354件の食料品画像から成るデータセット。 商品は10個のカテゴリーに分類されている。
小売商品チェックアウトデータセット: 商品画像の数量と商品カテゴリー数の点では最大のデータセット。単一商品の画像とチェックアウトシステムで撮影された複数商品の画像が含まれる。チェックアウト画像には様々なレベルのアノテーションが付けられている。
MVTec 細かくセグメント化されたスーパーマーケットのデータセット: 全てのオブジェクト・インスタンスにピクセル単位でラベル付けした21,000件の高解像度画像。オブジェクトは60カテゴリーの食料品や日用品から成る。実世界の自動チェックアウト、在庫あるいは倉庫システムと似た状態になるようにベンチマークが定められている。トレーニング用の画像は均一な背景に単一クラスのオブジェクトだけが撮影されているが、バリデーションとテスト用の画像はより複雑で多様である。
フライブルク食料品データセット: 25種類にクラス分けされた食料品の256×256RGB画像5000件から成るデータセット。
オンラインの店舗データ
ファッション-MNIST(エムニスト): Zalando(ザランド)の記事画像のデータセット。トレーニング用の60,000件の画像とテスト用の10,000件の画像から成る。10種類のクラスにラベル付けされた28×28グレイスケール画像。
COCOデータセット: 80種類のクラスに分類された80,000件のトレーニング用画像と40,000件のバリデーション画像を含む優れた物体検出データセット。
ECサイト衣料品用タグ付け: ECサイトから収集された約500件の画像が含まれる。シャツやジャケットなどの周りにバウンディングボックスが描かれている。
物体認識、商品のデータセット
食品画像データセット: 二種類の食品画像データセットから構成される。 1) 2500件の食品画像と 2500件の非食品画像を含むデータセット。食品と非食品の分類に利用できる。2) 11種類の主要な食品カテゴリーに分類された16643件の食品画像を含むデータセット。
フルーツ360データセット: 95種類のフルーツ65,429件の画像が含まれる。
花認識: ラベル付けされた4,242件の花の画像を含むデータセット。データ収集は、Flickr(フリッカー)画像、Google画像、 Yandex(ヤンデックス)画像のデータを基にしている。
船の種類認識: 九つのカテゴリーに分類された約1,500件の船の写真から成る。様々なサイズの船の写真がブイ、クルーズ船、フェリーボート、貨物船、ゴンドラ、ゴムボート、カヤック、紙の船、ヨットの九つの種類に分類されている。
スタンフォード大学 車のデータセット: 196種類に分類された16,185件の車の画像を含むデータセット。 トレーニング用の画像8,144件とテスト用の画像8,041件から構成され、各クラスにトレーニング用とテスト用の画像がほぼ半分ずつ含まれる。 クラスは通常、テスラのモデルS(2012年)やBMWのM3クーペ(2012年)などのように、メーカー、モデル、製造年で分類されている。
小売業におけるAI活用の未来
サービスを改善し、利益を上げるために企業が新しい技術を導入しようとするので、小売業界ではAI活用の実験が盛んに行われています。今後10年間でAIによる自動化が進むと見られる分野についていくつか例を挙げておきましょう。
チャットボット: チャットボットとのやり取りは顧客が既に使い慣れているメッセージングアプリを利用して行われます。チャットボットは特定の商品を必要とする顧客のショッピングアシスタントとして機能したり、質問に答えたり、一般客に新商品やトレンド商品を勧めたりします。
ビジュアル検索: 素敵なTシャツを見つけたとき、それを写真に撮るだけで、購入可能な店舗が分かるとしたらどうでしょう。簡単に言うとそれがビジュアル検索です。ビジュアル検索は、画像データセットで学習させたAIアルゴリズムを利用します。ユーザーが写真を撮ってビジュアル検索エンジンにアップロードすれば、システムがライブラリ内を検索してその写真と一致する商品を見つけ出し、ブランド名や価格などの関連情報と共に表示します。
音声検索: バーチャルアシスタントの普及に伴い、音声検索の活用が着実に増えています。モバイル検索の20%ほどが音声検索を用いて行われているという報告もあります。音声検索は外出先での検索に便利なので、活発な顧客層を持つ小売業者にとっては良い投資になるでしょう。
小売業界の発展に伴い、自動化の必要性が急速に高まりつつあります。これを念頭に置くと、いつどこで技術開発を行うべきかを知ることが非常に重要です。AIの実装を成功させるためには、次の三つのステップに従って進めることが鍵となります。
- 目標設定: AIによる自動化でどのような問題を解決しようと考えていますか。
- 必要なデータを定義: どのようなデータが必要となりますか。それらのデータを既に保有していますか、それとも収集する必要がありますか。
- 作業分類: AIモデルに正確な教師データを提供するため、どのような方法でアノテーションを行いますか?誰がモデルを構築しますか?モデルは複数の言語で機能する必要がありますか。
AI学習データサービス
これらの質問に対する答えが見つからない場合でもご心配には及びません。既存のデータセットから、または貴社用のカスタムプロジェクトにてデータ収集およびアノテーションを支援いたします。貴社のプロジェクトに最適な学習データを入手するために、お気軽にお問い合わせください。