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機械学習の分野で働く者にとって、世間がAIに対して抱く期待は意欲を起こさせるものであると同時に厄介なものでもあります。この分野で進められている開発について議論が盛り上がるのは素晴らしいことですが、それらの議論の仕方が意図せずに重要用語の意味をわかりにくくしてしまうということがしばしば起こっています。 流行語を多用したり、異なる概念を同じ意味で使っていたり、さらには簡単な機械学習モデルと人工意識を持った機械を混同していたりといった状態でメディアがAIを取り上げることでトピックが混乱し、議論が意味のないものになってしまうことがあります。さらに困ったことには、この分野の専門家がこれらの用語の意味を議論している場合にも同じようなことが起きるのです。
本記事では「人工知能 」と「機械学習」について考えていきます。これらの用語の間の微妙な違いやそれらが貴社のビジネスにとってどのような意味を持つのかについて、まとめてみました。
人工知能(AI)とは何か?
細かい点の多くはまだこれから議論を続けていく必要がありますが、AIはこれら三つの中で最も古く最も広範な意味を持つ用語であるというのがほぼ一致した意見です。基本的に、AIの分野では、人間と同じような方法を用いてタスクを行い、大抵の人間と同じかそれより上手にタスクを行える機械を構築することを目標としています。この分野では一般的に、コミュニケーション、推理、空間認識など、従来、機械が人間より劣ると考えられてきた領域のタスクに焦点が置かれています。
AIアルゴリズムと通常のアルゴリズムの違いは、ルールの作成方法にあります。通常のアルゴリズムでは、特定の種類のインプットに対してどのような種類のアウトプットを生成すればよいかを決定する特別のルールを開発者が設定します。一方、機械学習と大部分のAIアプリケーションでは、ソフトウェアにインプットとアウトプットの正しい組み合わせを学習させて独自のルールを作成させます。
メディアや一般の人が、SF小説やSF映画に登場する意識を持った機械とAIを混同するのは、研究者にとって非常に苛立たしいことです。実際、AIの目標は、総体的に人間より賢く、人間が指導しなくても独立して新しいことを学習できる機械を作ることです。 これは通常、強いAIと呼ばれていますが、現在のところ、これを作成することができるのかどうか、そして、それが作成できるとしたらいつのことになるのかなどについてはわかっていません。
従って、今日でのAIの活用は弱いAIと呼ばれるものに限られます。これは、AIアプリケーションが、学習するよう指示されたものだけを学習し、非常に限られた分野で利用されていることを意味します。例えば、チャットボットはおそらくインプットされた言語から新しい単語や文の構造を学習できるでしょうが、自動運転をしたり、株価予測をすることはできません。そのため、機械が近い将来、人間に取って代わるかなどという議論はあまり役に立たないのです。強いAIは議論するための興味深いトピックではありますが、現在のところ、それらはこの分野で実際に行われている開発の多くとは全くかけ離れています。
AI研究では、タスクの詳細を正確に定義すれば、どのような知能を真似する機械でも作ることができるとされています。そのため、機械が人間より劣るとされる領域で機械の能力を向上させる場合は通常、特定のタスクに取り組むアルゴリズムの構築と開発に焦点が置かれるのも不思議ではありません。これらのアルゴリズムは様々な高速処理技術を利用して、注釈付きデータセットのパターンや関係性を理解します。タスクを明確に定義して高品質のデータを提供できれば、しばしば人間の能力を超えるアルゴリズムを作成することができます。
これらを念頭に置けば、チャットボットや音声アシスタントがAIとして分類できることが明らかでしょう。話し言葉を理解し、それに対する適切な行動を決定し、回答を生成する能力は、人間がお互いコミュニケーションを取る方法に大変似ています。大部分のチャットボットは、基盤とする機械学習のプロセスを通してこのような機能を備えることができます。では、次は機械学習について詳しく見ていきましょう。
機械学習とは?
多くの人はこの二つの用語を同じ意味で使っていますが、機械学習は一般的に AIの一部と考えられています。機械学習とは、AIアプリケーションを構築する主要な方法です。つまり、「人工知能」は目標を表し、「機械学習」はインテリジェントな機械を作るために利用するモデルやプロセス、技術を指しています。この分野がデータマイニングやデータ分析と非常に関係が深いことは、機械学習を応用統計学の一種と考えることもできることを意味しています。
AIではインテリジェントな機械を構築する際に他の方法を用いる可能性も残されていますが、これまでのところ、この目標を達成するための試みは主に機械学習アルゴリズムを利用して行われています。機械学習アルゴリズムには、他のアルゴリズムと一線を画す大きな特徴があり、近い将来AIを作成する別の手法が見つかった時も、この特徴がこの分野を定義付けるものになると考えられています。 機械学習とは主に、様々な注釈付きのデータとアウトプットの間の関連性を見つけるアルゴリズムに関係しています。そして、重要なのは、機械学習は様々な新しいデータから独自に学習できるので、モデルを改良するために人間の介入が必要ないということです。 この方法は、コンピュータービジョンや機械翻訳などAIの主な活用事例の多くで利用されています。
これまで作成されたAIアプリケーションの中で機械学習を基にしていないものがあるかどうかに関しては、議論の余地があります。現在のチャットボットはほとんど全て、機械学習を基に構築されていますが、データ科学者の中では別の方法も検討されています。 ルールベースモデルは、人間による話し言葉の構築方法を真似るために専門家が開発した言語体系を基にしています。このように人間が構築した包括的なルールに基づくシステムを本当に機械学習と呼べるかどうかは判断が難しいところですが、この問題について議論することによってAIと機械学習の違いが多少明らかになるかもしれません。
これら二つの概念の間の境界は曖昧な時もあります。おそらく、AIを目標として捉え、機械学習はそれを達成するためのアルゴリズムやプロセスとして考えるのが最も簡単でしょう。ただし、この考え方は将来、変化する可能性もあることを付け加えておきたいと思います。さらに、AIはテーマに沿って分けて考えることも可能です。